なぜ、成長を実感できないのか? その3

 そろそろまとめると、バブル崩壊後のゼロ金利政策により、投資が促進され景気の下支えをして、“GDPでみた場合の”成長率を確保することが可能であったが、投資収益率の低い投資が多くなってきたために、成長を実感できなかった、ということになります。

 忙しいけど、利益率が低いから儲からないんだよ、とはよく聞きましたが、国の統計資料を分析することによっても、このことをうかがい知ることができました。

 

 ならば、減価償却費率にあたる固定資本減耗増加率を超える成長を遂げればよいのでは?となりますが、バブル後のゼロ金利政策により収益性はさておき投資促進が行われたので、過剰投資になっています。そして、そもそも日本は90年代に人口ボーナスは終了し目新しい、成長セクターとなるような市場も相対的に少なくなってきているのも確かなので、現状の規模の投資に見合った成長を遂げることは、困難な作業でもあります。事実、不況下でも高い労働分配率と投資収益性の低下により、ゼロ金利政策の下でも、投資にあたる総固定資本形成は減少傾向にあります。このような状況の中で、為政者としては、困難な経済政策運営を求められるのは確かです。

 

 しかしながら、今回の分析では、分析の結果、デフレが悪い、円高が悪い、だから政策はこうしろ!

 

 とかではなく、国の統計資料を見ることで、”成長してんのに何で実感できないんだ?”という点だけに絞ってみてきたので、政策論の論議は避けます。

 

 いろいろ分析してきましたが、今回中心的に見てきた、指標という面では、先の言動を翻して政策的な言及をしたいと思います。

 

 ”国民全員が成長を実感するためには?”ですが、そもそも論として、長期的な成長という側面と国民の経済的幸福の向上という側面から、GDP重視の政策は止めるべきではないかとも思いました。これにこだわる理由は、国の威信かなにかでしょうが、国民の経済的豊かさを増大していくために、国民所得重視の政策をとってもらいたいと思います(所得でみるなら、所得収支をさらに加えた額で考えるべきでしょう)。

 

 

 

 

 

 

最後に、先に述べた企業に金が溜まり出している原因は?ですが、固定資本減耗の増加が原因です。

 

固定資本減耗は、企業で言うと減価償却費で、キャッシュ・アウトのない支出ですから、会社内部にお金がたまってゆきます。いわゆる内部留保効果です。

 

一方で、ゼロ金利でも、社会全体の投資収益性が低下してきているので、魅力的な投資案件が少なくなってきていることから、企業の投資にあたる、総固定資本形成はここ数年は減少傾向にあります。

 

結論としては、90年代の投資を回収したものの、良い投資案件が見つからないので、会社内部にお金が余ってきているのです。

 

 これを、労働者に分配すべきか?ですが、このお金は、小泉政権の時に流行った言葉でいうといわゆる”米一俵”にあたりますから、これを労働者に分配するのはいかがなものか?とも思います。また、経営者の責任はリスクと期待収益を見計らい、果敢に既存分野または、新規分野に切り込むことにより収益を上げ、会社を成長させることにあると捉えると、現在のように、「投資リスク恐怖症」に陥り、成長のための建設的投資を行なわないことは、任務懈怠に当るのではないかと思います。

 

 

 

 

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